第8話では、当初は疑いの目を向けられ、捕らわれの身となっていた乃木が、ベキに認められていく過程が描かれた。「憂助は死んだはずだ」と戸惑うベキだが、ノコルに接触できた経緯、乃木が話す父母との別れの話、その後の生い立ち、乃木が持っていた家に伝わる守り刀と、息子である信憑性は高まる一方で、ついにDNA鑑定を行う。ベキもまた息子を探していたが、乃木が記憶を失ったために別名をつけられて育てられたため、見つけられなかったのだ。本物の父子であることが証明されるとベキは涙する。それでも、仲間を裏切って自分のもとにきた乃木を心から信頼できないベキ。能力の高さを発揮してベキに利用価値があると認められた乃木は、ようやく牢屋から解放される。ベキは乃木のために部屋を用意し、”息子”として扱ってきたノコルと同じ純白のデール(民族衣装)を着せて乃木を長男として扱うように。兄弟で力を合わせろと、ベキはノコルが代表を務めるムルーデル社で乃木を働かせるよう命じた。

 また第8話は、乃木の目線からテントの内情が明かされていく。テントの収入は各国で仕掛けていた誤送金だけでなく、活発に行われていたテロ活動もすべて請け負い仕事で、しかもサイバー攻撃、暗殺、誘拐などの汚れ仕事も積極的に受け、巨額の報酬を得ていた。それゆえにテントのテロ活動には主義主張がなかったのだ。すべては金を得るため。そして8000万ドルもの巨額の幹部報酬は、すべてバルカの孤児たちの救済に投じられていた。ベキやノコルは子どもたちに慕われているようだった。また、ムルーデルで働くことになった乃木は、過去10年の損益計算書を見て、テントの6億ドル近い収益が丸々ムルーデルの儲けとしてマネーロンダリングされていることや、諸経費を除いた8割近くを土地の購入費に充てていること、テントが大規模なテロ仕事を請け負い始めた3年ほど前から土地購入を始めたことに気づく。はたしてテントの真の目的は何なのか――。

 今回の見どころのひとつは、“長男”となった乃木に対し、嫉妬を隠せないノコルだろう。血はつながっていないものの、息子として扱われ、組織のナンバー2として実務上のリーダー役を担っているノコルは、当初こそ「私はあなた(ベキ)の息子ですよ」と言うほどに、“ノゴーン・ベキの息子”としてのプライドをギラギラさせ、乃木に余裕しゃくしゃくの態度を取っていた。だが、乃木が実の息子であると知って涙するベキの姿を見た際には何とも言えない表情で2人を眺め、以降は乃木に対して敵意をむき出しにするように。ノコルが見せる嫉妬心といら立ちは、今後何が起こっても不思議ではないぐらい緊張感を漂わせていた。もしノコルの嫉妬心が暴走すれば、最愛の父であるはずのベキを裏切る展開もあるかもしれない。

 一方、ノコルは“息子”として、ベキの態度の変化に敏感に気づく。ベキが、乃木に純白のデールを与え、長男として扱うようになると、ノコルは「お父さんはどんなに知能があろうと、仲間を裏切り、殺し、ここに来たこの男を息子と認めていなかったはず。なのになぜ急に態度を変えたんだ」と不審がっていた。これはおそらく乃木の特殊能力と関係があるだろう。乃木が手に乗せるだけで1kgまでならほぼ10gの誤差に留めて重さを量れるという“特技”を発揮して青年養護施設内で起こった不正を見破ると、ベキは「誤差はどのぐらいだ?」と乃木に確認していた。乃木のことは信頼できないが「他に代え難い能力なら利用する」とベキが宣言していたことを考えると、この乃木の能力を何かに利用できると閃いたのではないか。