◆完成度の高いエンターテインメント作品

本作は“令和の価値観”に対して、一方的に“昭和の価値観”をぶつけるドラマでは決してありません。「伝えたいメッセージが明確」でありながら「ドラマとしての面白さ」を見事に両立しています。台詞にしてぶつけ合ったら説教くさくなってしまう場面は「ミュージカル仕立て」にすることで、軽やかに議論して気づきを与えてくれるのです。

本作の脚本を手がける宮藤官九郎氏は、ドラマ過去作の『池袋ウエストゲートパーク』や『ゆとりですがなにか』『俺の家の話』などを観ても分かる通り、そのときどきの時代を捉えることに非常に長けた脚本家です。その力が存分に発揮されており、昭和と令和の対比を心地よく楽しめます。

また、親が子を想ったり、誰かを愛したり、大切にしたりする普遍的な“人間らしさ”も描写。特に第5話は、市郎が自分と娘・純子(河合優実)の未来を知ることとなるエピソードで、爆笑からの号泣展開でした。また第6話で令和に訪れた純子が「うちの親父を小ばかにしていいのはな、娘の私だけなんだよ」と怒ったシーンにも涙。

毎話繰り広げられるコミカルな会話劇と、練り上げられた“魅せる”物語が、視聴者をどこに連れていってくれるのか。最後まで目を離せません。