TBS日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』17日の放送分は最終話。今回はシューマンの「ライン」でした。ドイツを流れるライン川のラインですね。マエストロ(西島秀俊)にとって「希望」の曲だそうです。まだ何者でもなかったころ、「生きてていいんだ」と感じさせてくれた「朝の光」のような曲だそうです。

 振り返りましょう。

■最後まで信用できるドラマだった

 第1話の冒頭、マエストロが海外のオーケストラで指揮を執るシーンで、団員が楽器を構える瞬間の複雑な音がちゃんと挿入されていて、この作品は丁寧に作ろうとしている、信用できそうだとこのレビューに書きました。そのときに感じた信頼感は、結局最後まで失われることはありませんでした。

 廃団寸前の地方オケに天才指揮者がやってきて、オケを再生させていくというベタな筋立ても、特に奇をてらうこともなく、人物を掘り下げることでこのドラマなりの美点を生み出していました。

 というより、終わってみれば『さよならマエストロ』は「奇をてらわないこと」「ベタであり続けること」を自らに強く課していたように感じます。