個人と法人の税率差を活用しよう 不動産経営の法人化メリット
ある一定規模以上になると、法人を設立してその法人が物件の所有者となることもタックスマネージメントの一手法だ。
不動産投資で法人化を考える理由は、当然のことながら、所得税と法人税の税率の違いだ。平成30年の税制大綱が2017年12月に発表され、所得税の増税と法人税の減税の流れが押し進められた。これは、国際的にみて高い法人税率を下げようとする目的と、所得税の中でも特に給与所得に課される税額と法人に課される税額では、構造上所得税に課税されるものが少なくなる傾向があり、それを是正する方向で法改正が行われた。この「所得税増税」「法人税減税」のトレンドはこれからも続きそうだ。
ではなぜ一定以上の課税所得となると法人化した方が有利なのだろうか、具体的に見ていこう。
現在、所得税の累進課税は5%から45%までの7段階だが、法人税は2段階とシンプルだ。
この両者の比較をする時、地方税や事業税を含めた実効税率で考える必要がある。
所得税の実効税率は、所得額が500万円で23.8%、800万円で28.6%、1000万円で31.6%となる(あくまで概算)。一方、法人税の税率は、資本金1億円以下の中小企業の場合、所得800万円以下の部分については19%、800万円を超える分については23.4%となる。法人にも地方税や事業税が課税されるので、それを踏まえた実効税率は、所得500万円で24.4%、800万円で24.6%、1000万円で27.1%となる。
実効税率ベースでの所得税と法人税の比較をした場合、所得が800万円だと、法人税の方が低い税率となる。法人化した場合、投資家自身が法人の取締役となれば、「役員報酬」という名目で会社から給与をもらうことが出来る。給与であるので、所得税法上とても有利な「給与所得控除」を受けることが出来ることもメリットだ。
また、適正額であれば、役員退職金も支給することができ、その手段として小規模企業共済や逓増定期保険、長期平準定期保険などの生命保険商品を使うことでその費用を損金として落とすこともできる。
物件を売却した時にかかる税金も全く異なってくる。所得税の場合、物件取得から5年以内に売却した場合は短期譲渡所得となり、その売却益に対して所得税と住民税を合わせて39%、5年超の場合は長期譲渡所得となり所得税、住人の合計で20%の税率で課税される。一方、法人税の場合、法人税課税所得に対して前に述べた税率で課税される。
法人化のデメリット
一方法人化する時のデメリットもある。登記などの法人設立費用がかかる、法人としての銀行口座を準備する必要がある、法人税申告書を作成する必要があり税理士などの費用がかかる場合もある、赤字でも毎年地方税の均等割がかかる、などが挙げられる。
このように、いわゆる「法人成り」を行うタイミングは、物件の規模、そこから発生する所得を考慮して決めることが重要なのだ。
文・中村伸一(マネーデザイン代表取締役社長)/ZUU online
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