不動産投資は、会社経営に例えられる。毎月入金される家賃から、借入金元本や利息、水道光熱費やメンテナンス費用などを引いてキャッシュフローが回るかを常に考える必要があるためだ。その際、忘れてはならないのが「税金」の存在だ。

物件を所有する上では空室リスクや金利変動による利息金額の変動などの予測できないケースも多々あるが、税金の支払いはある程度事前に見積もることが出来る。当然のことながら所有物件からのキャッシュフローは、いろいろな税金を差し引く前でなく、税引き後の手取り金額で投資効果を測る必要がある。

不動産投資では避けて通れない税金と上手に付き合う方法とは。減価償却や個人と法人の税率差を活用した節税スキームとはどのようなものだろうか。

減価償却の上手な活用

不動産投資を行う上で、減価償却費は損益計算上とても重要な項目だ。

ごく簡単に記せば、減価償却とは不動産投資で購入した建物価格をいったん貸借対照表に計上し、それを法定耐用年数で割って費用処理していくことをいう。文字通り建物の価値を減額していく経理処理だ。

建物の法定耐用年数は、木造22年、鉄骨鉄筋RC造47年(ともに住宅用)と決まっており、損益計算書上はこれをもとに損金として計上することが可能だ。

仮に自分が所有している土地に5000万円のRC造の新築マンションを建てたと仮定しよう。もしそれを手持ちの現金でまかなった場合、現金が建物に代わったわけだが、この5000万円が建物を建てた年に一括で損金算入できるわけではない。RC造の場合は47年の償却率0.022を使用し、「5000万円×0.022=110万円」が帳簿価格1円になるまで毎年損金算入することになる。

減価償却の最大のポイントは、「お金が出ていかず、毎年損金算入できる(このケースだと110万円)点にある。キャッシュフロー表には計上されないが、税金計算の基となる損益計算書には経費として損金算入できることだ。

不動産投資の上級者ともなると複数の物件を持つケースもあるが、その場合、トータルの税引き後損益を考え、わざと木造の中古物件を購入することで、上手にタックスマネージメントを行うケースもある。木造物件の法定耐用年数は22年と短い、さらに法定耐用年数の一部を経過した中古物件の場合、下記の式で減価償却期間を算出する。

(法定耐用年数—経過年数)+経過年数×20%

例えば築18年の木造物件の場合、下記となる。

(22年—18年)+18年×20%=7年 ※小数点は繰上げ

7年という短期での償却が可能になり、帳簿上の利益を効果的に圧縮することが可能だ。