夫の扶養に入りパートで働いている女性にとって、2018年はドキドキする税制改正がありました。

それは「配偶者控除」の改正。

改正内容を知り、自分にとってもっとも納得のいく働き方を考えていきましょう。

配偶者控除・配偶者特別控除とは?そもそも何のために存在するの?

配偶者控除・配偶者特別控除って何?

配偶者控除とは、所得が少ない配偶者を持つ人の所得税や住民税が安くなる制度です。

例えば、年収(年間給与収入)100万円の妻がいる会社員の夫が「年収100万円の妻を養っています」と年末調整の時に申告すれば、その年の税金が安くなり、すでに給与から引かれていた税金のうち一部が返ってくる、というわけです。

また、もう少し年収が高い配偶者がいる場合にも「配偶者特別控除」によって税金を安くしてもらえます。ただし、配偶者控除に比べると、配偶者特別控除のほうが金額は少なくなります。

今回の改正は「配偶者控除」と「配偶者特別控除」両方が対象です。

何のために存在するの?

実はこの配偶者控除という制度、けっこう歴史が長いんです。

日本に所得税が導入されたのは、1887(明治20)年。当時は、特に家族がいるからといって税金が優遇されるような措置はありませんでした。

それから約30年後の1920(大正9)年に、子どもや老親などを養う人を対象にした「扶養控除」が導入されましたが、このとき配偶者は対象外。古い家制度のもと、妻は家の仕事をするのが当たり前という考えが主流だったのか、扶養対象者にもならなかったんですね。

1940(昭和15)年になって、やっと妻も扶養控除の対象者に含まれるようになりましたが、どうやら時は戦争直前、「税金を安くしてあげるから子どもを増やせ」といった人口増加政策も狙いであったと言われています。その後、紆余曲折あり1961(昭和36)年に配偶者控除が導入されました。

扶養控除や配偶者控除とは、憲法の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という条文に基づいて、所得のない子どもや専業主婦の面倒をみている分、その夫の税金を安くしてあげるという国による配慮なのです。

ところが、女性が活躍できる場が増え、社会進出、すなわち稼ぎを得る女性が増えてきた今、古い家制度から生まれた配偶者控除は時代に合わなくなり、見直しは常に議論の対象となってきました。

ここしばらくは、夫婦控除などさまざまな新しい制度案がニュースに取り上げられていましたが、2017年度の改正(2018年分から適用)では、あくまで配偶者控除等の内容改正にとどまり、高所得の人を除き、その配偶者がより多く働けるように見直された内容となりました。

(写真=Africa Studio/Shutterstock.com)

2018年分からの新・配偶者控除/配偶者特別控除とは?

主な改正点は次の2点です。

1.配偶者控除に所得制限が導入された

これまでの配偶者控除は、養っている側の所得制限は特にありませんでした。どんなに稼いでいる人でも、年収が一定以下の配偶者(所得38万円未満=パート主婦の場合は給与収入103万円未満)を養っていれば、一律38万円の控除を受けることができました。

しかし2018年分からは、所得によって受けられる控除額に差が設けられ、所得が1000万円超(給与収入1220万円)の場合は控除自体受けられなくなります。

▽2017年分までの配偶者控除額

  • 一律38万円(配偶者が70歳以上の場合は48万円) ▽2018年分からの配偶者控除額
  • 控除を受ける人(養っている人・納税者本人)の合計所得金額によって控除額が異なる 【控除を受ける人の所得別、配偶者控除額】
  • 900万円以下     …38万円(配偶者が70歳以上の場合は48万円)
  • 900万円超950万円以下  …26万円(同32万円)
  • 950万円超1000万円以下…13万円(同16万円)

2.配偶者特別控除が受けられる年収が広がった

さらに2018年分からは、配偶者特別控除が受けられる年収が広がりました。

これまで、配偶者特別控除を受けられるのは所得76万円(給与収入141万円)までの配偶者でしたが、2018年分からは所得123万円(給与収入201.6万円)までは受けられるように広がったのです。

図にするとこんなイメージになります。

(画像=DAILY ANDS編集部)

 (※)財務省ホームページより抜粋

これまでは所得40万円(給与収入105万円)を超えると、年収が上がれば上がるほど、控除の金額は減っていました。

ところが2018年分からは、所得85万円(給与収入150万円)までなら、どれだけ稼いでも満額となる38万円の控除が受けられます(控除を受ける人の所得が900万円超の場合は除く)。

(画像=DAILY ANDS編集部)
(画像=DAILY ANDS編集部)