もしかしたらネタの広がりや展開が無限に浮かんでしまい、それを形にするとどうしても長尺ネタになってしまうという結果なのかもしれない。しかもバカリズムさんクラスになると書いたネタを全て披露するわけでは無いだろう。ある程度完成に近づけたとしても納得がいかなければその時は寝かせたりボツにするはず。そうなると7本から8本の新ネタというのは完成披露されたネタの数で、そこに至らなかったネタやネタ案の数までいれると相当な数になるだろう。ネタの台本だけではなく、ドラマや映画、本などまで書いていることを考えると、心の底からネタを書き表現するのが好きで、まさにお笑いは天職なのだろう。
さて続いては「ネタの賞味期限」についてだ。ラジオ内でお二人とも話していたが、テレビ等の媒体で公に披露する場合、大体3回くらいが限界で、それ以降同じネタをすると「また同じネタをやってるよ」と言われてしまう。お二人ほど注目される芸人なら尚更だ。これはテレビに限らずライブでも同じ状態になる。ある程度笑いが起こせる自信があるネタなら何度でもライブで披露したくなるが、面白い事に3回くらい同じネタを披露した後はライブだとしても笑いが少なくなっていくものなのだ。
もちろん芸人の影響力や出ているライブで回数は前後してしまうが、基本的には3回から4回披露して終わるものだ。ネタの質によっては単独ライブ以外ではやらないネタもあるくらいで、そのようなネタの賞味期限は1回ということになる。ちなみにネタの賞味期限は仕事場によって多少異なってくる。その最たる仕事場は営業だ。営業は基本的に自分たちの代表作を披露することが多く、子供が多い場所やお年寄りが多い場所、あまり知られていない場所、ファンが集まる場所などで多少ネタを変えはするが、新ネタをやることはまずない。どの芸人も必ず1つは営業でやるネタ、つまり「営業ネタ」は持っていて、「営業ネタ」の賞味期限はかなり長く設定されている。
ラジオ内でミュージシャンを引き合いに出し、ミュージシャンは何度やっても許されるし、どちらかと言えば知っているネタの方が喜ばれると言っていたが、営業に関しては芸人もこれと同じことが言える。まったく知らないネタをやるよりも、ある程度知名度があり、代表的なギャグやネタを入れつつ、どこでも笑いが取れる営業ネタをするのがベストなのだ。なのでネタの賞味期限はネタによって違うというのが本当の正解である。ただ基本的には3回なのも間違いない。売れていようが売れていまいが、0から1を生みだすアーティストとして、ミュージシャンの方達への妬みと憧れは芸人なら必ず持っている。こんな芸人にとっては当たり前の感情をラジオという媒体で聞けたのは、なんだか本当の素に思えて逆に新鮮に感じた。