お次は漫画界のお話。
私はマンガを全く読まないので『セクシー田中さん』というマンガも当然知らない。
何でも、ドラマ化された内容が原作と違うというトラブルから、SNSで激しい脚本家バッシングが興り、原作者の芦原妃名子が自死したというのである。享年50。
きっかけは、当該ドラマの制作スタッフで脚本家の相沢友子(52)のSNS発言が発端だったというのだ。
相沢は第1話から第8話までしか担当してない、第9話と最終回は作者の手によるもののだと説明した上で、「この苦い経験を次へ生かし、これからも頑張っていかねばと自分に言い聞かせています。どうか、今後同じことが二度と繰り返されませんように」と書いたのだそうである。
当初はSNSで、脚本家を擁護しようという声が広がったが、その後、芦原がドラマ化の経緯を説明すると、ネット世論が逆転し、脚本家や制作側である日テレへのバッシングが激しくなっていった。
こうした事態になって、芦原は、「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい」とメッセージを残し、自ら命を絶ってしまったと見られているようだ。
原作者の考えを尊重するのは基本の基であるが、それが守られていなかったとすれば、日テレ側の責任は重大であろう。
私は、これまで、そうした原作者の意向など無視してドラマ化、アニメ化がされてきていたので、今回もそれでいい、こちら側の作りたいようにやるという「慣習」が出来上がっていたのだろうと推測する。
ドラマ化に当たって交渉に当たった小学館へもバッシングの風は激しいようで、2月6日に社内説明会が開かれたという。
「役員からは、亡くなる直前まで芦原さんが行っていたSNSの投稿については“自身で説明したいという強い意思があった”とした上で、“ネット上の多くの反応が芦原先生を苦しめてしまった。SNSで発信が適切ではなかったという指摘は否めません。会社として痛恨の極み”との見解が示されました」(小学館の関係者)
2020年には女子プロレスラーの木村花がSNSでの誹謗中傷を苦にして、22歳の若さで自ら命を絶ってしまった。
私が市民メディアといわれた「オーマイニュース」というところで編集長をやっていたとき、読者の投稿に対するコメントを読む担当の人間は、日に日にうつ状態になっていくのがわかった。
私は彼に、毎日、すべてに目を通すことはしないほうがいいといった。ああした誹謗中傷のコメントは、読んでいる人間のメンタルをおかしくしてしまう「毒薬」になるものが多くある。
そうした時、傍にいる誰かに相談する、悩みを聞いてもらうなどしないと、追い詰められ、死を選んでしまうことは、あるかもしれない。
新潮は、SNSのおかしさを論じているが、私は、原作者を蔑ろにして、面白ければいい、原作など無視していいという、テレビの制作現場や上層部の傲りが、この事件の背景にあると思う。
そっちの“病根”のほうがはるかに深刻で、根の深い問題であるはずだ。