◆御手洗家の大階段は現在と13年前を隔てる結界

――今回、舞台として登場するリビングも、存在感があります。

春名慶プロデューサー(以下、春名P)「韓国映画の『パラサイト 半地下の家族』のあの邸宅が作品世界に寄与したように、本作でも重要な“登場人物”が、御手洗邸、特にリビングだと捉え、監督や美術スタッフと議論を重ねました」

――具体的にこだわったのはどこですか?

春名P「原作でも象徴的な大階段です。これは、物語におけるメタファーとして、結界だと解釈しました。

たとえば1階が現在で、2階が13年前。階段は杏子にとって13年前を取り戻すために行き来している結界で、だからこそ真希子は2階に行くことを禁じている。僕としては原作を読んでいるときから、そこにひとつのメタファーがある気がなんとなくしていました。

美術という点だけじゃなく、最終的な演出の意味でも、あの階段は象徴的に描かれてほしかったし、平川監督にも『禁じられた結界を行き来する杏子の姿は、丁寧に追ってください』とオーダーしていました。7話の頭で真希子が『私がやりました』と自白するのもあの階段が舞台ですしね。この物語のランドマークになったと思います」