◆“お土産のドーナツ”で夫婦の齟齬が浮き彫りに
子どもが亡くなったあとの夫婦の空間は、張り詰めた緊張感が悲しみに満ちていて、俳優ふたりのうまさが際立つと同時に、夫婦それぞれの気持ちの齟齬(そご)が大きくなっていくことが静かに描かれていた。時間がたって、美咲がようやく日常生活を少しずつ送れるようになったとき、透が「おいしいドーナツを買ってきた」と帰宅するシーンがある。
微笑みながら「お帰り」と言った美咲は、その一言を聞いて、冷たく「優ちゃん、ドーナツ食べられないから」と言い捨てる。アレルギー持ちの息子が食べられなかったドーナツを買ってくる無神経さを無言のうちに責める妻、それを聞いて「そうだな」とドーナツの箱をいきなりゴミ箱に捨てる夫。妻に食べさせようと買ってきたが、妻のすべての価値観の基準は今も失った息子にあると気づかされる場面だ。
Season1は夫のモラハラが刺激的だったがゆえに物語も派手に進んだが、今回は非常にシリアスであり、それゆえに人物の心理を丁寧に追い、深掘りしていると感じさせられる。3話に至るまでに、美咲の絶望や心の揺れがしっかりと伝わってくるので、観ている側としては感情移入がよりしやすくなっている。