さて、松本人志が文春を訴えた訴状は、文春側に届いたのだろうか。

 あまり時間が経つので、松本人志側がひっこめたのではないかという噂まで出ているようである。

 今週の文春によれば、これまで取材した松本人志との部屋飲みに参加した女性たちの証言から浮き彫りになったのは、共通点が4つあるというのだ。

 まず、直前まで飲み会の場所がホテルの部屋であることを女性に告げないこと。次に、松本は参加すると知らせないこと。そして飲み会の最中は携帯電話を没収、または利用を禁止すること。4つ目は、飲み会の終盤、何らかの「ゲーム」を行い、ひとりの女性を寝室に残し、他の参加者は退散するというのである。

 だが、なぜ、後輩芸人たちが松本人志のために、女衒のようなことまでして尽くさなければならなかったのか。

 それは、絶対的な上下関係が下支えするシステムで、20年以上前から存続したと証言するのは、名古屋よしもとの元芸人。

「当時、僕は売れるために松本さんに女性を調達していました。『ロンドンブーツ1号2号』や『ナインティナイン』は若者から絶大な人気があって、自然と女性たちが集まっていました。でも、松本さんは僕たちのような後輩芸人が人海戦術で集めないといけない。実際、『松本さんと飲もう』と言って断られることも多かった。僕たちが女衒に徹したのは、松本さんに少しでも取り入りたいから。逆に言えば、彼は若手芸人の『売れたい』という気持ちにつけ込んでいたのです」

 松本人志がこうした証言を読んだら、「俺のお笑い人生って何だったのか」と自問自答するのではないか。もし裁判に持ち込み、もし勝ったとしても、残るのは虚しさだけだろうな。

 文春は、この記事の続きに「松本問題『私はこう考える』」という欄を設けている。

 今回、聖心女子大学で教鞭をとっているD・マクニール(58)のコメントが面白いので紹介しよう。

「外国人である私が、日本のテレビを見ていて不快感を覚えるのは、男性芸人が女性タレントを『お前』と上から目線で呼んだり、女性の頭を殴ったりして笑いをとることです。もちろんジョークだと理解していますが、笑のためなら、女性を無下に扱っていいと伝えているも同然です。また、ダウンタウンの笑いもこうした『男子校のノリ』で、女性の扱いがひどいと感じることは少なくありません。

 今回、松本氏を告発した女性がいるように、少しずつですが、日本の社会でも女性が声を上げやすい環境が整ってきています。私は女子大の教壇に立っていますが、男性のセクハラ的な言動を許容せず、毅然と指摘する女子学生が増えていることも実感します。

 ただ残念なのがメディアの状況です。大手新聞やNHKはこうした性加害の調査報道に手をつけない。大人数のスタッフを抱えており、専属の調査チームを立ち上げる余裕があるにもかかわらずです。ジェンダー平等に向け、何より日本のメディアの意識改革が急務だと、痛感しています」

 その通り!