今週の第1位は、文春が奪還した。それも特大が付くほどのスクープインタビューである。
さぞ、新聞記者は臍を噛んでいることだろう。なんで文春なんだと。
読んでもらえばわかるが、高橋治之が文春を選んだ理由は、「自分のいい分をそのまま載せてくれる媒体が文春だった」のだと思う。
新聞もテレビの記者も、事件の被告である人間のいい分をそのまま載せれば、検察からクレームが付き、下手をすると出入り禁止になるかもしれないと怯えるのだろう。
だが、もちろん、文春が聞くべきことを聞いていないわけではない。そこの微妙な空気感は文春を手にとって見て見るといい。
さて、高橋はこう話しだしている。
「森さんから『あなたはマーケティング担当理事です』なんて言われたことは一度もありません。森さんが勝手なことを言っているだけ。委任の契約書にも、職務について何も明記されていない。つまり、職務権限のある『マーケティング担当理事』なんてものは存在しないんです。森さん、本当のことを言ってください」
一昨年の8月に東京五輪の受託収賄事件で逮捕され、9月に起訴された五輪組織委員会元理事の高橋治之被告(79)。
合計1億9800万円を受け取ったとして起訴された高橋だが、一連の裁判では、既に贈賄側の「AOKIホールディングス」の青木拡憲会長や、広告大手「ADKホールディングス」の植野伸一元社長らが罪を認めて有罪判決が確定している。
しかし、高橋は、受け取った金銭は「民間のコンサルティング業者としての報酬であって、賄賂ではない」として無罪を主張している。
裁判で最大の争点となっているのは、職務権限の有無だという。高橋の職務に「スポンサー集め」が含まれなければ、受託収賄罪は成立しない。
検察側は高橋が「マーケティング担当理事」として、スポンサー集めに関する職務権限があったと主張し、贈賄側の判決でもこれが認められた。
だが、一方で高橋側は、検察の主張の最大の根拠が、検察側が証拠提出した、組織委員会の森喜朗元会長(86)の供述調書だと訴えている。
森はここで高橋について「スポンサー集めなどのマーケティングを担当してもらうことにした」と説明しているという。しかし、高橋は冒頭のように、やるせない思いを口にするのだった。