◆いじめ、虐待、非モテ……加害者の抱える逆境体験

児童虐待
 実は、加害者のなかには過酷な逆境体験をサバイブしてきた人もいます。学校でいじめられた(性被害にあった)、家庭で虐待にあった、異性から人間扱いされなかった……などの経験です。これは小児性犯罪者特有の傾向でもあります。

 このような逆境体験は加害者にとって、自分が他人から拒絶された、「自分は受け入れられていない」と感じるつらい出来事です。当院のデータでも、小児性犯罪者117名に学生時代のいじめ被害について聞いたところ、半数以上の54%が「ある」と答えています。

 本来人間は「受け入れられたい」と望む生き物です。これは心理学者アブラハム・マズローが提唱した有名な「マズローの欲求5段階説」のうち、友人や家庭、会社から受け入れられたいという「社会的欲求」にあたります。

 この欲求が満たされない状態が続くと、孤独感や社会的不安を感じやすくなり、うつに陥るケースもあるともいわれています。

 本来、人間ならば誰もが持っている「受け入れられたい」という欲求が、いじめや虐待などの逆境体験によって抑圧され、それが恨みとなり、加害者のなかで「自分より弱い者を虐げたい」という欲求に変換されることがあります。