◆笑われるのが怖かった

私も、自分の性についてずっと悩んできたひとりだ。

幼稚園のころから生まれた時に割り当てられた「女性」という性別に違和があり、自分を「男性」としか思えず、小学生ですでに性別適合手術やホルモン治療を夢見ていた。性自認が男性なら女性を好きになるもの、と思い込んでいた時期もあるが、現実には女性しか好きになれずそのことにも悩んできた。

佐倉イオリ「怪物」レビュー
90年代当時、テレビではまだ「オカマ」という言葉が使われていた。私の父はそれを観て「バケモン」と笑った。

数年前、ゲイ男性を揶揄する「保毛尾田保毛男」が復活し問題となったが、ゲイが揶揄される風景は日常的なもので、私もよくわからないまま父の隣で笑っていた。自認する性で生きる人々に憧れを持つ一方、自分が笑われるのは怖かった。

自分を当事者と認められるようになったのは、30歳を過ぎてからだ。