「クィア(Queer)」というをご存知だろうか。LGBTQのQに当たるアイデンティティを表すとともに、LGBTQと同様、性的マイノリティ全般を指す言葉としても使われる。

最近では是枝裕和監督の『怪物』が国際的な映画祭で「クィア・パルム賞」を受賞したことが話題になった。

受賞に後押しされてか、公開時から絶賛の嵐だった。が、複雑な想いで受け止めた人たちもいる。中でも印象的なのは性的マイノリティ当事者の反応だ。

「LGBTQ当事者の方を向いていない」「(クィアが)物語を彩るものとして使われている」など、否定的なものが目についた。

是枝監督の「LGBTQに特化した作品ではなく、少年の内的葛藤の話と捉えた。誰の心の中にでも芽生えるのではないか」という発言に、性的マイノリティ性を「過度に普遍化する」ことへの懸念も呈された。

同賞の審査員長が「誰かの命を救う映画」と評したにもかかわらず、当事者が苦言を呈する本作。「クィア」というのならば、私も他人事ではない。自分の目で確かめることにした。