◆将軍の沈黙はなぜ続くのか

 予想以上だ。婚儀では、ぶっきらぼうもいいところ。開始早々、すっくと立ち上がり、その場をあとにする。すると直後、ダメ将軍の家重が何者かに暗殺され、将軍の座は家治にすげかわる。

 これは陰謀か、どうか。いずれにしろ、やっぱり気になるのは、ドラマが始まって20分以上が経過しているというのに、家治は、未だに沈黙を貫いていることだ。なぜここまで執拗に沈黙が続くのか。

 フジテレビで『大奥』が初放送されたのは、2003年のこと。すでに20年以上の月日が流れている。その長い時間経過が、そのまま家治の沈黙として描かれているのだとすると。

 家治がやっと発した「そうか」にはそれだけの重みがある。亀梨にとってはゴールデン・プライム帯ドラマ通算20作品目の出演作でもある本作は、とてつもない時代劇の傑作となり得るかもしれない。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu