◆権力・権威がめちゃくちゃ強くなっている
そういうところで、バキバキに「話芸の人」としての手数も増えている。そして企画者としてゲームメイカーとしての結果もどんどん出しているっていう意味で成長してる人間ではあるんですけれど、同時に権力がめちゃめちゃ強くなってるんですよね。
売れっ子で冠番組持ってるというタレントの立場から、松本さんがいないとまず企画ができない、という状況になっていった。企画を思いついたとしても松本さんの名前がないと人が集まらないっていうところも含めて、いないと成立しない番組とか企画が結構いっぱいあると。
だからといって、“今回の件で松本さんが退場することはお笑い界の損失だから、退場させてはいけない”という安直な論説がX(旧Twitter)で見られるし、それとこれとはまったく別の話で僕は意味わかんないなと思うんですけど、そのぐらい権力がめちゃくちゃ増してきた歴史を語らないと、今回の件を語ることはできないと思います。
<文/大島育宙 構成/るしやま>
【大島育宙】
1992年生。東京大学法学部卒業。テレビ、ラジオ、YouTube、Podcastでエンタメ時評を展開する。2017年、お笑いコンビ「XXCLUB(チョメチョメクラブ)」でデビュー。文化放送「おいでよ!クリエイティ部」、フジテレビ「週刊フジテレビ批評」にコメンテーターとしてレギュラー出演中。Eテレ「太田光のつぶやき英語」では毎週映画監督などへの英語インタビューを担当。「5時に夢中!」「バラいろダンディ」他にコメンテーターとして不定期出演。