令和ロマンの1本目でも、くるまがマイクを離れ、しゃがみこんで客席に語りかける場面があった。マイクより前に出たように見えたが、その所作もコントロールされたものだった。

「あれは前に行ってないんで、僕は。横に出ただけなんです。前に出れないから、上下(の動きで)出すしかなかったんです」

 ほかにも、テレビスタジオと舞台との照明の違いや、顔のテカらせ具合による面白さの変化など、くるまは「見た目」というテーマに対しても明快に言語化していく。その姿は風格さえ漂っていた。

 すべての漫才師がここまでこだわる必要はないだろうし、令和ロマンがここまでこだわったから勝ったというわけでもないだろう。くるまが局メイクのまま登場しても、おそらく結果は変わらない。

 高比良くるまという漫才師の実行力の片鱗を見せられ、ただただ畏怖の念を深めるだけの動画だった。

(文=新越谷ノリヲ)