生命保険の「保険金」はどれくらいにすればいいの?

損害の「値段」で決まる損害保険とは異なり、生命保険の保険金は契約によって決まる。一昔前は夫が家計の大黒柱で、女性の就労が一般的ではなかったため、夫に高額の保険をかけることがよくあった。

高額の保険金のためには高額の保険料を支払わなくてはならない。家計の見直しを考える際にまず考えるのは月々の固定費となっている生命保険料が多すぎないかという点である。保障は必要に応じた額で十分なのだ。

適切な必要保障額の求め方

家計の担い手が死亡した場合の必要保障額は、単純に死亡後の総支出から総収入を引いて求める。

支出総額は、末子独立までの遺族生活費(現在の生活費の70%)と、末子独立後の配偶者生活費(現在の生活費の50%)、その他の必要資金(子供の教育費、住居費、緊急予備費など)だ。生活費の70%や50%はファイナンシャル・プランナーが用いる数字であくまで仮定だが、一つの目安となるだろう。

住居費はゼロ円で済むこともある。住宅ローンを組むときに団体信用生命保険に加入しており、死亡時に一括返済できるケースだ。

一方、総収入については「社会保障・企業保障」「保有金融財産」をまず把握しよう。社会保障には遺族年金がある。国民年金加入者は子どもが18歳になるまで年間約78万円と子どもの加算額(第2子まで1人当たり約22万円)となる。夫がサラリーマンで厚生年金に加入していた場合は、遺族基礎年金に上乗せして遺族厚生年金が支給される。老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3相当額だ。

条件次第で中高齢寡婦加算があったり、30歳未満の妻は5年の有期だったりする。制度が複雑で分かりにくければ、会社の担当者やファイナンシャル・プランナーなどに相談してみよう。

このようにして求めた支出総額と総収入との差額を生命保険で賄えばよい。そして、必要保障額が最大になるのは末子が誕生した時で、あとは少しずつ減額していけば済む。その分支払う保険料も節約できる。

よそのお宅はどれくらい?統計資料から見る実態

生命保険文化センターが3年ごとに生命保険の加入状況などの実態調査を行っている(「生命保険に関する全国実態調査」2015年12月発行)。

この調査によると、2015年時点で何らかの保険に入っている率は89.2%となっている。世帯での死亡保険金額は2,423万円(世帯主の死亡保険金額は1,509万円)、世帯年間払込保険料は38.5万円だ。

死亡保険金を年齢別で見ると、29歳以下で2,405万円、30~34歳3,093万円、35~39歳で3,050万円、40~44歳で3,277万円、45~49歳で3,287万円、50~54歳で3,388万円、55~59歳で3,175万円、60~64歳で2,362万円、65歳~69歳で1,799万円、70歳以上で1,194万円となっている。

世帯主死亡保険金額の推移をみると2003年の2,313万円から2015年に1,509万と減少傾向だ。妻の死亡保険金も2003年の1,076万円から807万円に減っている。

この調査では、加入状況だけでなく意識調査も行っている。その結果「年間最大保険料をいくら払えるか」という問いの答えは平均33.9万円であり、前回より2.3万円少ない。

一方で生活保障へのニーズは多様化している。現状でも「世帯主に万一の場合」への備えは2位で(47.4%)、1位は「世帯主の病気やケガ(54.3%)」への保障だ。3位以下は「配偶者の病気やケガ(45.1%)」「配偶者に万一の場合(35.5%)」「世帯主の老後の生活資金(30.7%)」と続く。

今後増やしたい保障も「老後」「介護」が多い。一方、今後減らしたい項目は「特にない」が大多数で、他の選択肢も1%以下なのだが、世帯主の死亡保障だけが1.4%で1位である。

減らすほどでもないが、「追加で加入する意向がない」人に尋ねると、その理由は「経済的余裕がない(51.3%)」が最多で、次に「生命保険にはもう十分加入している(22.8%)」となっている。なお、生命保険に入っていない世帯でも、理由は「経済的余裕がない(42.3%)」がトップとなっている。

この調査からは、死亡保険金以外のリスク対策の多様化と保険料という経済的負担の中で、人々の保険商品に対する姿勢が伺える。死亡保険の金額を、世帯主死亡後の総支出から総収入を引いて求める数字がいわば理論値だとすれば、統計に表れているのは現実の値といえるだろう。もちろん、統計は平均など全体の動向を掴むもので、あくまで自分の個別のケースの試算をおろそかにするべきではない。ただ、保険の金額を実際に決定にする際の参考となるだろう。

ライフスタイルが多様化した現在、個別のニーズと家計状況などを踏まえ、消費者それぞれが保険商品を比較検討しながら加入するようになってきている。賢い保険選びをするためには、まずは保険に関する基礎用語を明確に把握しておきたい。

文・ZUU online編集部/ZUU online

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