生命保険での「保険金」と「給付金」との違い

日常で使う「保険金がおりた」という表現にも正確には保険金とは呼ばない場合がある。保険会社から個人へ支払われるお金には「保険金」の他にも「給付金」という言葉がある。

生命保険の「保険金」とは、保険の対象となっている人が死亡(または高度障害)のときや、満期まで生存していたときに支払われるお金を指す。入院や手術で保険会社から契約に基づいたお金が支払われた場合、それは保険金ではなく「給付金」という。

大きな違いは課税の対象かどうかだ。所得税法上、生命保険の契約のうちケガや病気で本人や一定の親族が受け取る給付金は非課税だが、保険金は所得税・相続税・贈与税のいずれかの対象となる(契約者と受取人の関係で異なる)。

ただ、名称が保険金でも非課税とされるものもある。例えば、「特定疾病保険金」や「リビング・ニーズ特約保険金」などだ。「生前に闘病のために使うものは非課税」とイメージすると分かりやすいだろう。

損害保険との大きな違いは、損害保険の「保険金額」「保険価額」、そして実際に保険会社から支払われる「保険金」が全て「損害の額」を基に決まるのに対し、生命保険での保険金や給付金は「定額」を契約することだ。「ヒト」の命や健康に客観的な値段はない。契約者が将来の保険金や給付金を決定し、それに応じた保険料を払う。

損害保険の「保険金額」は満額支払われない?

損害保険の契約上の「保険金額」はあくまで保険金の上限だ。また、損害保険には「利得禁止の原則」があり、実際の損害以上の保険金を受け取ってはならない。これを、「実損払い」という。

保険のかけ方によってはさらに保険金が少なくなることもある。超過保険や全部保険では実損払いだが、保険金額が保険価額より小さい一部保険では、保険金額と保険価額の割合に減額されるのだ。これを「比例払い(比例てん補)」という。

比例払いをごく単純に言えば、200万円の保険価額のものに対して100万円の保険金額がかけられているような場合、損失額が100万円でも支払われる保険金は、その2分の1となる。保険価額に対する保険金額の割合が2分の1だからだ。

もっとも、火災保険では比例てん補の場合でも分母の数字を80%とすることが普通だ。分母を小さくすることで普通の比例てん補よりは多めの保険金が支払われるようになっている。

近年は火災保険の比例てん補は少なくなりつつある。ただ、古いタイプの保険や火災保険以外の保険では残っていることもあるので、契約前にきちんと確認しよう。

なお、超過保険で保険金額がいくら高くても保険価額を超えて保険金が支払われることはない。利得禁止の原則から実損てん補分しか認められないからだ。

超過保険は、「契約時のうっかりミス」や「保険期間中に家財を処分するなどして保険価額が大きく下がった」などの場合は、保険金額を変えることができるし、超過分の保険料が返ってくることもある。保険はかけっぱなしにせず、時々見直すことが大切だ。