トヨタ自動車の100%子会社である軽自動車大手のダイハツ工業が開発中に行った試験で、大規模な不正が横行していたことが発覚した。

 それにより国内の全工場が稼働停止に追い込まれ、少なくとも1月いっぱいは生産が止まる見通しで、さらに長引く可能性があるとの見方も出ている。

 ダイハツは軽自動車のトップメーカーとしてこれまで築いてきた消費者の信頼を失いかねず、会社存亡の危機に立たされているが、親会社のトヨタの豊田章男会長には責任感がないのだろうかと、ジャーナリストの井上久男が追及している。

 ダイハツの不正を調べている第三者委員会は、一因として三菱自動車同様、実験と認証を担当する部署が同じ開発部門にあったことを挙げている。ダイハツは他社の不祥事を他山の石とすべく、社内点検などを行ってこなかったのだろうか?

 その点をダイハツに尋ねるとこう回答したという。

「他社における不正が発覚した際に、法規で求められている手順を無視した業務フローになっていないかを認証試験準備、臨床試験などのステップごとに点検し、確認したが、不正を監視することが不十分な体制であったという事実を認識することができていなかった」

 広報室は深く反省しているとしている。

 井上は、第三者委員会の委員長で弁護士の貝阿彌誠が記者会見で「(親会社の)トヨタに責任はない。ダイハツの経営幹部が責められるべき」などといったが、果たして本当にそうなのだろうかと疑問を呈している。

 第三者委員会は、「2014年以降に不正の件数が増加している」とも指摘している。ダイハツでは新車開発で大幅な期間短縮に成功した2011年以降、過度なコスト削減を展開し、衝突試験を担う安全性能担当部署の人員を大幅に削減した。トヨタからの委託業務が増えた割には人が減らされ、その結果、不正に手を染めたと見ることができるのではないかと、井上は指摘する。

 トヨタ側に問い合わせると、「小型車を中心としたOEM供給車などの開発が増えた中、それが負担になっていた可能性もあること、また、認証業務の現場がこのような状況になっていたことを認識できなかったことについて、深く反省している」と広報部は語っている。

 井上は、こうしたコメントから見ても、今回のダイハツの不正はトヨタに責任の一端がある見ている。

 昨年春、ダイハツで不正が発覚した後、豊田章男会長は「グループ全体の問題として先頭に立って信頼回復に努める」と語ったが、12月20日の記者会見に豊田会長の姿はなく、その頃、豊田会長は自身がオーナーであるレースチーム「ルーキーレーシング」のドライバーとしてレースに参戦するなどのために、タイに滞在していたという。

 さらに豊田会長は、1月5日に開いた賀詞交換会の挨拶で、ダイハツには一切言及しなかったそうである。

 豊田章男会長はいつから裸の王様になってしまったのだろうか。