注目の邦画、ドラマが多数公開され、素晴らしさを改めて見直すこととなった2023年。本記事ではそれらの作品で爪痕を残した30代以上の俳優にフォーカス。

それぞれの活躍を振り返っていく。

◆難役、難役、また難役。最高を更新し続ける磯村勇斗

2023年、『東京リベンジャーズ2 運命/決戦』『最後まで行く』『波紋』『渇水』『月』『正欲』と7本もの映画に出演した磯村勇斗。作品数の多さも驚きだが、彼が演じるのは世間の“普通”とは違っている役である場合が多いことも忘れてはならない。

『波紋』では新興宗教にハマる母と障がい者を恋人に持つ役を、『月』では重度障がい者施設で働き、次第に狂気に絡めとられていく役を、『正欲』では特殊な性癖を持つ役を演じた。もちろん、現実にいない人の役だからすごい、なんて言うつもりはさらさらない。磯村のすごいところは、彼が現実との地続きで存在しているように見えるところだ。

例えば『月』で演じた“さとくん”は、劣悪な労働環境の中で次第に彼の中の正義が歪んでいく過程を表現していた。彼が最後にとった行動、そこに向かうまでの目に宿った暗い闇を思い出し、いまだに背筋が凍る感覚を思い出す。