千姫──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

 『どうする家康』、最終話はなかなか衝撃的でした。大坂夏の陣のパートは番組の前半でわりとあっさり終了し、残りの時間の大半を、死の間際の家康(松本潤さん)が見た「夢」の描写に費やしていたからです。あるいは夢というよりも、最終話冒頭にあった、大坂夏の陣での最終決戦を前に阿茶局(松本若菜さん)から頼まれ、話して聞かせた「鯉の話」を家康は思い出していたのかもしれません。いずれにせよ、家康を含めてさまざまな人物がまだ若く元気なときの「過去」の姿で登場しているのを見て、グッとくるものがありました。そこに老いさらばえ、病床に伏している「現在」の家康の姿が時折挟まれることで、「過去」と「現在」の間に実に長い年月が流れてしまったことを痛感させる名演出でした。「老い」とは、「現在」と、自分が本当に若かった「過去」との落差をなにかの拍子に思い知らされることにほかならないのかもしれません。

 今回は『どうする家康』についてのコラムの最終回として、豊臣家滅亡とその後の「伝説」についてお話ししたいと思います。