■2009年 第9回大会

8年連続8回目の笑い飯がついに頂点に立つ日が来た、と誰もが思ったファーストステージだったが、結果は競技漫才の権化のようなスタイルを持ってきたパンクブーブーが「7-0」で優勝を飾った。大ブレークを経て戻ってきた南海キャンディーズが8位に沈むなど、『M-1』の厳しさを垣間見る年になった。

・史上初の連覇ならず

前年の優勝コンビ・NON STYLEが連覇を目指したが、準決勝敗退。敗者復活で9番手に登場し、最終決戦まで残ったが、優勝どころか存在感を示すことができなかった。開催前は明らかに優勝候補筆頭、NON STYLEの大会になると思われていたが、やはり『M-1』は厳しい。

・出た! 100点!

「僕も98にしようと思ったんですよ、あと困るから。でも困ってもええわってくらい感動しました」

 5番手に登場した笑い飯は「鳥人」を披露。審査員全員がこの日の最高得点を付け、島田紳助は『M-1』史上唯一となる100点を献上した。

トップバッターのナイツが634点の高得点で、しょっぱなからテンションの高い大会ではあったものの、この笑い飯の100点で最高潮に。『M-1』のスタジオは、お祭り気分一色に包まれる。しかし、その直後。

・車にひかれた子犬の話

見知らぬ少年が2人現れ、特に暗い目をした左の少年が、こんな話を始めるのである。

「今日ね……来る途中に……道で……こんくらいの子犬が……車にひかれてて……」

この少年は、明らかにスタジオの空気をリセットしようとしている。意図的に大きく間を取って、残酷極まりないエピソードを披露する。初出場、23歳、ハライチ・岩井勇気の全国デビューだった。

・チンポジ伝説 2本目の悪夢

前年、オードリーが2本目のネタ選びに失敗し、優勝を逃した。それよりさらに大きな失敗として歴史に残っているのが、笑い飯の2本目「チンポジ」である。「チンポジ」で覚えているが、見直してみたら野球のキャッチャーと審判がモメてるシーンっておもしろいよねというネタだった。途中からラグビーのゴールキックで互いにボケるネタに変わり、チンポジは最後の西田の1ボケのみだった。

優勝を告げられたパンクブーブーは茫然自失。黒瀬純は「ぜんぜん意味がわかんない」と声を絞り出し、佐藤哲夫は首を横に振り続けていた。