離婚の際に何らかの事情で、父親が子どもの親権を持つことは少なくありません。母親が経済的理由や養育環境などに不安を抱えていたため、やむなく父親に親権を委ねた場合でも、その後に不安材料が払拭されれば、父親から親権を取り戻そうとする気持ちは当然だと言えます。
そこで、離婚時に親権を持たなかった母親が、父親から親権を取り戻すことはできるのか、そのためにはどのような条件が必要なのかを解説します。
離婚後の親権の変更は可能か?
親権は、子どもの養育、福祉を第一に考えた権利ですが、一方で継続性と母性を重視している権利でもあります。
継続性について解説しましょう。例えば、離婚前に、親権を調停、審判、裁判まで争っている場合を考えてみます。裁判で争った場合は数年かかることがありますが、その間夫婦は別居していて、子どもと父親が同居していた場合には、父親に親権を認めるケースが多いと言われます。これは、子どもの生育環境を極力変えないための配慮なのです。
一方、夫婦が同居して親権を争っている場合、母親に親権を認めるケースが多いと言われています。仮に、母親が働いていない等、経済的な不安材料があっても、母親が親権を持つことが多いのです。特に、子どもが幼ければ幼いほど、その傾向が強いと言われています。これは、いわゆる「母性」を重視したもので、子どもと母親の結びつきの方が、父親との結びつきよりも強いとの判断です。
この継続性という親権の特性を考えると、一度離婚時に決まった親権を変更することは容易ではありません。従って、親権を変更できる条件は、主に以下のケースにほぼ限定されています。
親権を変更できるケース例
- 親権者が長期入院したり、病気をしたりして子どもの養育が困難になった
- 親権者が子どもに暴力をふるったり、虐待を行ったりした
- 養育環境が悪化した
- 親権者が海外転勤になった
- 子どもに強制的労働をさせた
- 育児放棄を行ったり、親権者が子どもを置いて行方不明になったりした
- 子どもが親権者の変更を希望している
親権の変更手続きの前に話し合いをしよう
親権を渡してほしいからと言って、弁護士を立てていきなり調停や裁判を申し立てることは、なるべく避けた方が良いでしょう。離婚しても子どもの父親と母親であることに変わりないのですから、基本的にはまず話し合いを行った方が良いですし、お互いが感情的になると話がこじれることも考えられます。
もちろん、元夫に親権の変更を直接切り出すことは気が引けるでしょうから、あくまでも話し合いを持つための代理人として、弁護士に依頼することには問題ありません。元夫が海外転勤になった、長期入院になったなどの場合は、相手が親権の変更に応じてくれる可能性は高いはずです。