◆深愛はとっさにハルキを抱きしめた

 父親に殴られて育った深愛は高校生のとき、同情してくれた同級生と駆け落ちしようとして彼の親に見つかり、家に戻される。彼女は自分が両親を裏切ったと今でも感じているのだが、それこそが彼女の認知の歪みなのだろう。

『泥濘の食卓』
 そんなことをハルキに話すと、ハルキも自分の心を打ち明ける。

「もう無理なんです、家も学校もこんなクソ田舎も」

 ちふゆに「襲いかかった」と吹聴され、周りから四面楚歌になったハルキは、やりきれない思いを深愛にぶつけた。深愛はとっさにハルキを抱きしめ「大丈夫、大丈夫だから」とすべてを受け止めようとする。