◆「女性」として生きることを決意してからの生活

谷生俊美さん
――トランスしてからの心境や生活の変化についても教えてください。

 男性として過ごしていたときと「女性」として過ごす今は違いますね。具体的にいうと、夜道を歩いていて後ろに男性がいると、怖いと思うことがあったり。

 トランス前までは振り返って後ろを確認したり、男性がいるから早足で歩いたりした経験がなかったのですが、トランスして初めて、実は世の中のほとんどの女性が経験していることだと知りました。

――多くの女性が経験することも、男性にとっては当たり前ではないと。

 そうですね。例えば、日本には痴漢行為から女性を守るため、女性専用車両がありますよね。このことについて、男性の中には女性ばかりが優遇されているという意見を持つ人も少なくありません。

 そうなったとき、男性の怒りの矛先が女性に向かってしまう構造があるんですね。本来、痴漢をする犯罪者にこそ怒りが向くべきなのに。……というように、今までにみえていなかった世界がみえることで、「そういうことだったのか」と思うことが増えました。