◆守りの鎧の意味合いを、今こそ東山は実感か

最後の最後で、ルディが、自由への希求を切実に歌うボブ・ディランの「I Shall BeReleased」がまた心を激しくかき乱す。

それまでずっと、肩を落としてうつむきがちで忍耐してきたルディが、世間の偏見や差別の圧をはねのけて、己の鎧を脱ごうとする瞬間の歌声は、鶴が自分の羽を折ってできた糸を思わせた。不謹慎かもしれないが、東山紀之はこんなにも最高のタイミングで演じることができたのではないかと思うのだ。

これまで東山紀之が美しい鎧をまとっていたのは、自分が信じる、人気タレント東山紀之のとしての攻めた生き方のためで、彼はそれを脱ぐ必要性を感じていなかったのではないか。それがいま、世間の批判の弓矢や剣が襲ってきて、自分を守るために必死で鎧を着込むことになった。

ルディが、内に柔らかな心を持ちながら、ときとして、激しく、やんちゃな態度をとる、そういう守りの鎧の意味合いを、今こそ東山紀之は実感したのではないだろうか。