◆物語と会見とが重なって見えたりもして
さて「チョコレートドーナッツ」である。東山はショーのシーンは圧倒的に華やかで、でもそれ以外は、終始、肩を落とし気味で、鍛えた身体を小さく見せていた。ビジュアルは映画のルディにずいぶんと寄せている。
が、アラン・カミングよりも声も動きも抑制して、ルディはショーでは華やかに歌い踊るが実生活は慎ましく暮らしている印象を受けた。長い髪の毛の後れ毛みたいなものにどこか、密やかに生きているイメージを感じさせる。
そこは役をそう解釈して演じているだけなのかもしれないのに、当人の実生活と重ねて、会見や社長業でお疲れなのかなとも思ってしまうのは、いいのか悪いのか……。ダウン症の子供が実親に虐待されていたところを、引き取ったルディが裁判で、あれこれと無神経な問いを受ける場面が、9月7日の東山の会見と重なって見えたりもして。
それとこれとを混在してはならないとは思うのだが、物語が、世の中に起こりがちなことを見事に描き出しているともいえる。
それはつまり、正しいことを追求することは大事だが、自分の正義を信じ過ぎると、正義とはまた別の暴力になることがあり、自身の理想にはまらないことへの寛容さが失われてしまうことである。
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