20年には、こちらも前年の『M-1』決勝をきっかけにブレークしていたぺこぱが敗者復活戦に出場。松陰寺太勇いわく「めっちゃスベった」ものの、投票では3位に。後に松陰寺は「知名度だけで3位まで残っちゃって。選ばれてたら絶対炎上してただろうと思って、ホッとした」と明かしている。昨年の敗者復活戦も、通過したオズワルドより2位の令和ロマンのほうがウケていたという声が少なくない。

 実際、知名度のない漫才師にとっては、決勝の9組に残らなかった時点で敗戦ムードが漂っているのが現状だ。

 一方で、『M-1』当日の夕方から生放送される敗者復活戦は本大会を盛り上げる上での重要なコンテンツであることは間違いないだろうし、見ている側としても、夢舞台に気に入った芸人を送り出す投票行為は、それはそれで大変に楽しいものでもある。個人的なことを言えば、去年は確か、令和ロマン、ヤーレンズ、ケビンスに投票したと記憶しているが、「まあオズワルドだろうな」と思っていたことは自白しておきたい。

 結局のところ、『M-1』という大会が大きくなり、一部のお笑いファンだけでなくライトな視聴者が投票に参加すればするほど、不公平感は大きくなっていくしかないだろう。視聴者投票システムを続ける限り、当時のサンドウィッチマンやオードリーのような無名芸人が敗者復活を勝ち上がるドラマは決して生まれない。

(文=新越谷ノリヲ)