バイトが行っていることを知って、前出3人も向かうことにする。横柄な態度で「お裾分け」を求め、断られる。「おまえは楽をして先代の味を守っているだけだ、無能シェフだ」と面罵されてしまう。

 とんでもない。先代の味なんて守ってない。ソースは蹴とばして台無しにしたし、ディナー用の食材は管理不足で全部傷めた。あんたが思ってるより、たかおはずっと無能だ。

 ところがバイトが何か言うと、厨房からウチワエビが出てくる。魔法か? 催眠術か?

 事実関係と会話の内容が合ってない。言うはずのないことを言う人がいて、心を打たれるはずのない言葉で心を打たれる人がいる。これがシナリオの手落ち。

 普通、ダメな脚本のドラマというのは「設定はいいのに、脚本の部分で矛盾だらけで共感できないよね」か「設定グダグダで意味わかんないけど、なんかセリフに人の心が乗っかっててグッときちゃうよね」のどっちかのパターンが多い。『ONE DAY』のシェフパートは、設定のダメとシナリオのダメが混在している。それによって何が起こるかと言うと、ドラマに張られた伏線が、伏線なのか脚本のミスや説明不足なのか、判断がつかなくなる。

 警視庁の蜜谷(江口洋介)が正体不明の自動車にはねられるシーンがある。ニノ、中谷美紀、大沢たかおが偶然通りかかっていて(偶然通りかかってんじゃねえよ、というのはもういい)、主人公3人が同じフレームに初めて収まる、重要なシーンだ。