タイトルの『エンドロール!』も、叶井の案だった。編集側の3人が寄ってたかって40以上のタイトル案を提出したが、叶井がそのどれでもない表題案を一発で決めてきた。これが伝説の宣伝プロデューサーかと、舌を巻くしかなかった。カバーの撮影では、「ジャケット姿でバックショットを撮りたい」とだけオーダーしたが、鮮やかなピンク色を羽織ってきた叶井の姿に天を仰いだ。
プロモーション的にも心情的にも、この本を間に合わせたかった。急ピッチの制作は、なんとか叶井が生きているうちに完成を見ることができた。
作業を共にする間、叶井の中に絶望や諦念や不安や恐怖を感じることは一度もなかった。今日は仕事ができるから仕事をする。叶井が私たちスタッフに見せる姿、そのテンションは常に一定で、そのことがどれだけ作業の救いになったかわからない。死を目の前にして、人に気を使わせない振る舞いを続けることのタフさは想像を絶するが、叶井は無理をしているわけではなさそうだった。痛いときは痛いと言うし、キツいときは「今日はキツいね」と正直に口にした。
こんな人間には、会ったことがない。編集作業を続けるうち、日に日にその思いは強くなっていく。
豊島 やっぱりあれですか、生きることに未練がないから。
叶井 そう、だから、死ぬことにも興味ないんじゃない?
もっとも印象に残ったやり取り。映画監督・豊島圭介を迎えた対談での一説だ。
発売日が決まり、パブリシティ取材が行われている合間の休憩時間に、雑談まじりに叶井に話を聞いた。
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