移換手続きの期限

注意が必要なのは、この企業型確定拠出年金からの移換手続きには6ヵ月以内という期限があることだ。厳密に言えば加入者資格を失った日が属す月の翌月から数えて6ヵ月以内の間に、所定の手続きを済ませなくてはならない。

さらに注意したいのは、加入者資格の喪失日についてである。企業を退職した場合、この加入者資格の喪失日はその退職日の翌日になる。

例えば4月1日から31日までのうち、退職日が4月1日から30日のどれかであれば資格喪失日は4月中のため「31日までの間」に収まり、期限は5月から計算して6ヵ月後、10月末となる。だが退職日が31日だと加入資格喪失日は5月1日、期限は翌月の6月から計算して11月末となる。

もし6ヵ月の期限以内に手続きを終えられなかった場合、年金資産は自動的に別の場所に移換される。移換先は加入する確定拠出年金があるならそこへ、そうでないなら国民年金基金連合会の仮預かり口座となる。

しかし自動移換になると、いくつものデメリットが発生してしまう。その1つは手数料の負担だ。移換の際、関係する各機関から手数料を徴収されるうえ、放置しておくと仮預かり口座の管理手数料も負担することになる。

加えて仮預かり口座にある資産は運用できず、その期間は老齢給付金の受給要件になる通算加入者等期間に入らない。結果的に本来算入されるべき期間が算入されず、年金の受取開始時期が遅れる場合もある。自動移換になってしまった後でも状況に合った手続きをすれば運用の再開などにつながるケースはあるため、できるだけ早めの対応が望まれる。

個人型確定拠出年金を退職した時

個人型確定拠出年金の加入対象者は幅広く、日本に住む20歳以上60歳未満の人であれば通常加入できる。具体的には自営業者や学生、フリーランス、会社員、公務員、また会社員および公務員の配偶者などの人々だ。

ただ農業者年金の被保険者や国民年金の保険料免除者、企業型に加入していて規約で個人型への同時加入が認められていない人は加入できない。しかしそうでなければ、たとえ会社に勤めていても加入対象となる。

そのような会社員は、勤め先を退職しても個人型に引き続き加入できる。自営業者やフリーランス、専業主婦(夫)などに立場が変わる場合でも、個人型の加入資格を喪失することはない。退職した後に別の企業に転職する場合は、個人型との同時加入が認められていない企業型の導入企業に勤めない限り、基本的に継続しての加入が可能だ。

企業型から個人型への移換が可能なように個人型から企業型への移換も可能であるため、再就職先の企業に企業型があり、個人型との同時加入ができない場合は企業型へ資産を移すことになる。そのほか、規約に個人型からの資産受け入れを認める旨が記載されていれば、確定給付企業年金へも移換できる。