■サルゴリラ「マジシャン」

白状してしまえば、準決勝終了後に決勝10組の予想をしたときに15組くらい候補を挙げて、そこにサルゴリラは入っていなかった。そして、この「マジシャン」はサルゴリラの2本のうちでも弱いほうだと思っていた。つまりは、決勝に残った10組が用意していた20本のコントの中で、これがいちばん弱いと思っていたのだ。節穴である。このレビューは節穴が書いている。ごめんなさい。

あんまりこういう言い方は好きじゃないのだけれど、この日のサルゴリラは神がかっていたとしか言えない。笑いの神が2人に微笑んだとしか。なんか知らんが、全部おもしろかった。ピーチペンチを取り出したときに、消滅したはずの靴下ニンジンがイカ箱からはみ出してしまうという演技のミスもあったが、まったく気にならなかった。

構造としてはルールさんという冴えないおじさんのキャラコントと小道具大喜利を並走させながら、同じくらいの振り幅で崩しを重ねていくという、わりと複雑なことをやっているのだが、準決勝ではバラバラに見えたこの2つのラインがどうして決勝では1つにまとまって推進力を得たのか、あんまりよくわからない。こういうことがあるから、コントを見るのは楽しい。

■ラブレターズ「アパートの隣人」

「ポップなお芝居ができる部分があるので、それを見てもらいたい」という事前VTRの塚本のコメントが、実にしたたか。ホラーテイストのネタをかける前提で、始まる前からフリを入れていたことになる。

ハスキー犬を室内で放し飼いにしているという「ちょっと怖い家」から、いきなりトップギアで壁を叩いた溜口の「めちゃ怖い」までスピード感で一気に世界観に持っていかれるし、冷静で遠慮がちな塚本が本来の目的である「娘さんをください」だけは聞こえるように言いたいという強い気持ちも伝わってきた。

何が足りないとか、何がよくないとか、そういうことは何も思い浮かばないラブレターズらしい、ラブレターズの中でも歴代最強クラスのコントを歴代最強クラスの暴れっぷりで見せたと思う。3位のニッ社とは4点差。カゲヤマは下ネタだし、ニッ社はグロいし、サルゴリラはジジィだし、普通のライブなら「ラブレターズいちばん笑ったね」と言って帰る若い女性客も多くいるだろう。最後に、やっぱりちょっと凄まじい大会だったと実感させられた。

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「ファイナルステージ」に続く

(文=新越谷ノリヲ)