■隣人「チンパンジーに落語」
橋本の妙な色気とチンパンジーのコントラストが冒頭から楽しいし、チンパンジーに落語を教えるという仕事をさせらている現状に対する諦念と、それでも情熱を持って指導法を工夫する人柄の良さもあって、こんな奇想天外なネタなのに全体として上品な雰囲気を醸しているのも不思議な魅力だった。
終盤に向けてパワーダウンしていったのは、この物語の本来の目的が提示できなかったことが原因のように思える。チンパンジーがチンパンジー語の落語を覚え、素直に座布団の上に座るところまでは想像できても、その先、依頼主が落語家に指導を依頼した理由が不明なので、感動的な展開に気持ちが乗せにくいし、脱走するというオチがどんな正解に対する裏切りなのか伝わってこなかった。
そんなの関係なく笑えればいいだろという話ではあるのだけれど、そうだったほうが笑えたんではないのかという仮定の話です。はい。
■ファイヤーサンダー「ものまね芸人」
むちゃくちゃ面白い設定。まずこてつがものまね芸人であることが明かされ、この時点で崎山はたぶんマネジャーなんだろうなと予想していると、少しして崎山もものまね芸人だったことがわかるという二重のバラシも絶妙で、この瞬間に2人がすごく仲がいいんだろうなという、関係性における過去の時間の経過が想像できて、一気に物語の世界が広がっていった。
「なんで日本代表より層厚いねん!」とか「俺らがゼロからものを生み出せるわけないやろ!」とか「なんかフレーズ残せ!」とか、いわゆる“ものまねあるある”も、見る側が想像するよりひとつ奥にあるものを拾ってきていてセンスを感じるし、それをきっちりパワーワードとしてハメてくる段取りも巧い。
さらにオチでは、今度は2人の未来も想像させてくれる。物語時間の前後数年という時間がくっきり想像できる脚本を5分のコントで仕上げてくる崎山の能力の高さには、舌を巻くしかない。
ここまでやって3組のファイナルにすら残れないとは。もう。