■や団「舞台演出家」

「や団、もう出ちゃうの!?」と3回目のびっくり。この大会の優勝候補はニッ社とや団だと思っていたので、どんな大会になるのかまったく予想がつかなくなってしまった。

「厳しい演出家は灰皿を投げる」という常識(?)は観客席の若い女性には通用しないという前提で、ロングの佇まいに説得力を持たせているのがさすが。この3人で100万本くらいネタを書いてきたからこそ、全員のルックスと行動がフィットしていて、めちゃくちゃ見やすくなっている。

ガラスの灰皿をゴンと置くのではなく、優しく置いて回すのも、中嶋が粗暴な人間ではないことと灰皿が死ぬほど重いことの両方を一度に表現できる上、不思議なスリルが発生していてコントを豊かなものにしていると思う。

役割分担完璧。というか、全部完璧。そういう印象。

■蛙亭「寿司」

前振りのVTRでイワクラが「中野の覚醒」と語っていたが、むしろ書き手としてのイワクラの覚醒のように思う。中野だけが面白く見えればいいという、いい意味での開き直りを感じて感動した。そして、それを超えてくる中野の凄まじさ。演技力とか滑舌とか、そういうものを超越した存在としての違和感を表現できる演者は、今の芸人界を見渡してみてもそう多くないと思う。

その違和感があるからこそ、大桶の寿司を1人ではなく友達と4人で食べる(誕生日に集まってくれる友達がいる)という事実だけで笑いにつながっている。というか、中野は好きな寿司が「とても好きだ」と言っているだけで、変なことはひとつも言っていない。寿司については気が短くなるものの、基本的に言動は優しい。それがここまで笑いを呼んでしまうという中野のフィジカル、つまりは体型と動作と発声の持つ特殊な力が発揮された素晴らしいネタだった。

この出来で8位とは。