20歳で国民年金加入のお知らせが届いたとき、「学生だったから年金保険料を払わずにいた」という方もいるでしょう。その支払っていない期間に応じて、将来受け取れる年金が減ってしまうことをご存知でしょうか。そのしくみと対処法について解説します。
年金には「学生納付特例」というルールがある
国民年金は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入して、保険料を支払うことになっています。ただし、20歳時点で所得が一定以下の学生であれば、申請すれば例外的に保険料の納付を猶予してもらえます。これを「学生納付特例」といいます。
この制度を利用すれば、学生のあいだは支払っていなくても「未納」扱いにはなりません。ただ、学生納付特例はあくまで「猶予(支払いを待ってもらう)」であり「免除(支払いをしなくてよい)」ではない点に注意が必要です。
学生納付特例を利用しているあいだは、「受給資格期間(将来の年金を受け取るために必要な加入期間)」としてカウントされますが、「将来の年金額」としてはカウントされません。
しばらく支払いを待ってもらっている状態なのに、そのまま支払わずに放置しておくと、きちんと支払った場合に比べて将来受け取れる年金の額が少なくなってしまいます。
将来の年金を増やすには「追納」
学生納付特例を利用していた場合など、過去に保険料を納めていない期間がある人が将来の年金額を増やすには「追納」という方法があります。
追納とは、支払っていなかった期間の保険料をさかのぼって支払うことをいいます。支払っていなかった期間の穴埋めができて年金が増えるのはもちろん、追納した保険料は全額が「社会保険料控除」の対象になるため、所得税や住民税が安くなるというメリットもあります。
1点注意したいのが、追納には期限があるということです。追納できるのは「10年以内」という決まりがあり、それより前の分については後から納付したいと思っても追納できません。ちなみに、学生納付特例の手続きをせずに保険料を支払っていなかった状態(未納)だと、納付期限から2年以内の分しか支払えません。
追納したら年金額はいくら増える?
追納したら将来の年金がいくら増えるのか、気になるところですよね。
日本年金機構によれば、学生納付特例を利用していた2年分の保険料(約40万円)を納付すると、将来の年金が「年間約4万円」増えます。
(出典:日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」)
65歳で年金を受け取り始めるとして、おおむね76歳以降まで長生きすれば、支払った保険料よりももらえる年金の方が多くなる計算です。
ちなみに、所得300万円の人が約40万円の年金保険料を納付すると、税金が最大8万円ほど安くなります。つまり、32万円の実質負担で将来の年間4万円UPが手に入ることになります。この計算だと受け取り開始から約8年で元が取れますね。
収入が高い人ほど所得税の税率が高く設定されているため、控除による節税効果が大きくなりやすいです。社会人になって特に収入が増えた年に追納するのがおすすめです。
余裕ができたら追納がおすすめ
学生時代の年金保険料を支払っていない場合、将来の国民年金が満額受け取れなくなってしまいます。しかし未納なら2年以内、学生納付特例などの手続きをしていた場合は10年以内であれば追納が可能です。金銭的に余裕が出てきた時点で未納分の保険料をさかのぼって支払ってはいかがでしょうか。
関西学院大学商学部卒業後、銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。AFP資格保有。
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