さらに、性加害事件などで示談書が取り交わされると、以降は被害者側が新たな補償請求などができなくなるケースが一般的だが、要望書では「性加害問題においては、被害者は、長期間にわたって幼少期の辛い記憶と向き合うことを強いられるため、将来のメンタルヘルスの不調やこれによる就労不能状態が続くことも十分に考えられます」と指摘。過去に性加害事件で慰謝料や弁護士費用だけでなく、後遺障害(PTSD)による慰謝料1000万円、就労不能による逸失利益約3500万円を含めて計6000万円の損害賠償が認められた事例を挙げ、将来的な損害という観点が不可欠であるとして、示談書の書式を公表するよう求めている。また、被害者の家族も苦しんでいるとして、要望書では「補償されるべきは、被害を申告した被害者本人はもちろんのこと、被害者のご家族にもその範囲を広げて対象とすべき」と提言された。

 そのほか、要望書では「SMILE-UP.と被害者救済委員会に当事者の会が推奨する複数名を参加させる」ことを要請。対立的な構図ではなく、融和的に被害補償を進めていくべきとの認識のようだ。

 この要望書をめぐっては「どこからどこまでを『ジャニー氏の遺産を基に成り立っている』と判断するのか分からない」「新会社が被害補償に関わったら、罪のないタレントたちへの影響が今後もずっと続くのでは」といったファンからの疑問や心配の声もあり、ネット上で物議を醸している。

 ただ、いずれにしてもジャニー氏の行為が「人類史上最悪の性虐待」と呼ぶべき悪質なものだったのは間違いなく、本人が他界している以上、金銭補償しか救済の手段がないのは事実だ。当事者の会からの一連の要望に対して、SMILE-UP.の東山紀之社長らはどのように対応するのだろうか。