◆第1話冒頭、いきなりの性描写の狙いは

 ドラマ『初恋、ざらり』の面白さは、ざくざくろ氏の原作漫画『初恋、ざらり』(連載:コルクスタジオ/単行本:KADOKAWA)を忠実に再現している点が大きい。実際、1話冒頭から、コンパニオンとして働く有紗が男性客に性行為を強要される、というシーンも原作通り描かれていた。とはいえ、いきなり過激なシーンから始まると視聴者にネガティブな印象を与えかねない。

 このシーンをカットするか、もしくは後半に回想シーンとして登場させても良かったのではないか。北川氏は「このシーンは絶対やらなければいけないと思っていました」とキッパリ。

ざくざくろ『初恋、ざらり』
ドラマ制作の羅針盤ともなった原作/ざくざくろ『初恋、ざらり』(KADOKAWA)
「有紗は『必要とされると拒めない』『自分の存在価値に迷いのある』という人間であることを伝える、重要なシーンです。

 もちろん、1話冒頭からということには迷いがありました。ただ、本作を制作するうえで『原作の良さを表現しよう』ということを一種のスローガンのように現場で共有しており、『迷ったら原作に立ち返ろう』という認識がありました。そのため、『原作では冒頭からこのシーンがあるのだから、そこを変えてしまったら視聴者に伝わる有紗の人物像まで変わってきてしまうかもしれない。ドラマでもやはり冒頭は同じにしよう』ということで撮影しました」

「初恋、ざらり」
©「初恋、ざらり」製作委員会
 徹底した原作へのリスペクトを口にしたが、「原作通りですと、どうしてもドラマの話数が余ってしまうため、原作にはないオリジナル展開も入れています。例えば、原作ではあまり描かれていない有紗の友達の友子(高山璃子)にスポットライトを当てたストーリーも加えました」と、原作ファンが新鮮に楽しめるストーリーもドラマで見られると語った。