◆「話し合いは必要」という現場の空気

 運だけではなく人にも恵まれた作品だと北川氏は話す。

「僕自身、現場の雰囲気があまりにピリッとするのは嫌なんですよね。もちろん良い作品を仕上げるために役者や監督、プロデューサーそれぞれが意見を出し合う中で衝突することはありますし、それ自体を否定するつもりはありません。

 ただ、本作では役者や監督含め、穏やかな人が集まりました。加えて、“知的障がい”を扱うということで『話し合いが必要だよね』という認識をみんなが共有できており、感情的にならずに意見を出し合ってより良い作品作りに臨めたと思います」

 現場の雰囲気は経験したことがないほど良かったらしく、「これだけ優しい雰囲気になるって本当になかったので、撮影が終わった今でもビックリしています」と口にした。

 いろいろな人達の優しさやセンスが混じり合っているからこそ、本作に惹きつけられるのかもしれない。

<取材・文/望月悠木>

【望月悠木】

フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki