九条は1周目で突き落とされた3月10日、同じ新校舎の渡り廊下で待ち受ける。1周目と同じように九条を突き落とそうとした手を、九条は摑まえる。そこにいたのは、やはり星崎透(奥平大兼)だった。個性派ぞろいの3年D組にあって、これまで自由人のように振る舞っていた星崎だが、担任教師の命を奪おうとしたことを九条に気づかれても、いつもと変わらない態度を取る星崎に恐怖を感じた。

 「やっぱりあなただったんですね」と口にした九条里奈。何がきっかけで星崎に目星を付けていたのか。それは1周目で九条が突き落とされた際、犯人の顔が見えなかったこと。鵜久森を突き落としてしまった西野美月(茅島みずき)の告白から、九条を突き落とした犯人は相手を見ようとしなかったことに気づき、それは犯人に明確な殺意がなく、無感情に近い心境だったのではないかと。そして、この1年を通して生徒たちがさまざまな感情に揺さぶられてきたなか、唯一、教室での出来事を作り物かのように客観的に眺めていた星崎の顔が浮かんだのだ。

 星崎は1周目、九条を突き落とした後、自らも命を絶っていた。この世界が白黒映画のような景色に見えるという星崎は、「なんで誰も変えてくんないんだろう」と絶望していたのだ。そして2周目では、九条の変化によって「景色」は色づき始めたが、気が付くと自分だけが変化できないことに気づき、そのことに星崎は絶望し、ふたたび世界は白黒の「景色」に戻ってしまったのだった。「誰かのために生きてみたかった」。自由奔放に見えた姿の内側では、幼少期から周囲と合わせることができず、変わりたいと思っても変わることのできない自分に苦しんでいたのだ。

 星崎は「何でもする」と言っていた九条に、「俺と一緒に死んでくんない?」と頼む。「私が何でもするのは、生徒が変わるため」とはっきり断る九条。「色を失った世界を淡々とこなす日々がむなしくなる」という感情に九条は思い当たる節があった。まさに1周目の自分がそうだったからだ。本ドラマにおいて、思い返す際の「1周目」の場面がモノクロで演出されていたのは、そうした心情も表現していたのだろう。そして、2周目を生きる九条は、達観して白けてしまうのではなく、変われるとまず自分を信じてみてほしいという言葉を、自分の経験を通して伝える。「悲しいね」と言いながら、それでも自分の心が動かないという星崎は、自ら転落をしようとする。死なせまいと必死で星崎の腕を掴む九条。そこにD組の生徒たちが駆けつけ、夫の蓮(松下洸平)の手助けによって星崎は救助された。