学園ドラマの定石は、問題を抱える子どもたちを教師が導く成長ストーリーだ。9月23日に最終話を迎えた日本テレビ系『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』も、前話までその路線であることで間違いなかった。それは筆者をはじめとした視聴者が、教室で巻き起こる教師と生徒の対話を第三者の視点から見ていたからだ。その“魂の授業”の当事者である教師・九条里奈(松岡茉優)から見えていた世界とは……。最終話は九条の視点から、本作品の真のメッセージが明らかになった。

 鳳来高校3年D組の担任教師・九条が卒業式にD組の何者かに突き落とされ、「死にたくない」と願った瞬間、1年前の始業式に時間が巻き戻り「2周目」の人生をスタートさせるというところから始まる本作。自身の死の運命を変えようと、D組の生徒全員と真剣に向き合うことを決意し、クラスを変えてきた。同じく「2周目」を生きていた鵜久森叶(芦田愛菜)は転落死してしまうが、その真相が明らかになった翌日から、不破大成(のせりん)の行動をきっかけに、卒業式の日までおよそ半年間、D組の生徒たちは代わる代わる鵜久森の机に花を置くようになる。不都合から目を背け、自分勝手に生きてきた3年D組は変わった――。そう感じさせる光景だったが、その変化に置いていかれたままの生徒が一人だけいた。