従来の映画宣伝の方法は通じにくくなっている?

C氏:『ラム』に関しては最初小さめに30館ぐらいで劇場を溢れ返らせて、最終的に70館ぐらいまで膨らませるという、映画興行の理想的な動き方をしていましたね。

A氏:映画館に足を運んでもらうための事前情報の出し方が変わってきているような。キャストのメディア露出や派手なイベントといった従来の映画宣伝って、難しくなってきてるんですかね。

B氏:僕もそれ感じていますね。配給宣伝側がマスコミに資料や画像を配る従来のやり方が通じなくなってきたというか。

A氏:スーパーマリオもストーリーについて語るような作品じゃないと思うし、スラムダンクも別にストーリーで興味を引く作品ではないですもんね。みんな湘北が勝つことを知っているという意味では。

B氏:まあ、僕は知らなかったけど(笑)。

A氏:あ、すみません……。でも四半世紀前に連載が終わっているマンガの映画ですから(笑)。

B氏:宮崎駿の『君たちはどう生きるか』も場面写真を1枚も出さなかったことはずっと話題でした。鳥みたいなイラストが出ていただけで。

A氏:本来は宣伝がしにくい作品がSNSなどでクリティカルな話題となって、流行のタイミングで多くの人がわざわざ劇場へ足を運んでいるんですよね。そうなってくると今後、映画ライターや映画評論家って宣伝PRの場で必要とされるのかな?とか考えちゃうんですけど。

C氏:特にスラダンはひたすら隠す宣伝戦略が顕著になったことが功を奏したと思うんですが、やっぱり作品によりますよね。作家性の強い作品は時代背景など前情報として必要な情報やポイントを補完してくれる人は絶対必要です。個人的には評論家を育てる土壌がない日本の現状を危惧しているくらい。

B氏:欧米では映画評論家という職業が今なお成り立っているみたいですけど。

A氏:もともと向こうは新聞・雑誌でのショービジネスの評論に歴史的な権威がありますからね。日本もあるっちゃあるけど、欧米とは文化の根差し方が違うし、ライターの立場からすると映画の原稿料は安すぎて食えないという。