◆“母乳ピアス”で卒乳を決心

――母乳育児を頑張っていたことが描かれていましたが、かなり苦労したのでしょうか。

真船佳奈さん(以下、真船):子どもを産む前は、「ミルクで良いし、ミルクでも母乳でも健やかに生きていたらいい」という気持ちでいたんです。それが産後、ふとミルク缶に「最良の栄養は母乳です」と書いてあるのを目にしたり、助産師さんからの「母乳は頑張ったほうがいい」という何気ない言葉や、小児の栄養に関する情報を目にするうちに少しずつ変わっていきました。

私は母乳があまり出なかったので「我が子の栄養を自分で賄(まかな)えていないんだ」と思うようになりました。母乳はとにかく最初は子どもに吸ってもらわないと軌道に乗らないというシステムになっているらしいのですが、私は産後2日間くらい寝不足が酷くて夜間は子どもを看護師さんに預けていたんです。「そのせいで初乳の出が遅くなったんじゃないか」と、スタートダッシュできなかったことでも自分を責め続けていました。母乳だけで子どもが1日過ごせることがゴールだと思い込んで、どんどん自分を追い詰めていました。

真船佳奈さん
――母乳をやめたのはいつ頃だったのでしょうか。

真船:生後一か月の時点でやめようか悩んでいたのですが、結局踏ん切りがついたのは生後6ヶ月くらいの時でした。それまで、授乳は親子のコミュニケーションだと思っていたし、息子が私のおっぱいを忘れてしまうことが悲しくて、なかなか断乳に踏み切れませんでした。母乳は3日くらいあげるのをやめると段々出なくなるんですが、その期間に耐えることができなくて「やっぱりあげよう」となってしまっていたんです。

最終的に、“母乳ピアス“という、母乳を固めたアクセサリーがあることを知って、「自分はちゃんと頑張ったんだ」という証を形に残すことで断乳に踏み切ることができました。出産前は、母乳ピアスなんて絶対に作らない人間だと思っていたんですが(笑)。

断乳前には、母乳が少ししか出なくなっていて、息子にとってはデザート程度の量だったのでスムーズにやめることができました。母乳がたくさん出ている人はもっと苦労するのかもしれません。