◆あのね、女の子なんて人格は、ないの
向井くんが10年前に元カノに振られたのは、相手から「守るって、何から?」と訊かれ、上手く答えられなかったからだった(少なくとも向井くんは長らくそう信じ込んでいた)。大好きな恋人をずっと守ってあげたい……。そう考えるのは“男として”当然だ。そんな価値観で生きてきた向井くんにとって、「守ってあげたい」は最大の愛情表現であり、心から相手を思いやっている証でもあった。
まだ若く、経済力も十分じゃない自分が「守る」だなんておこがましい。向井くんはそんな反省をしていたけれど、アラサーになって知り合った洸稀に「私だったら、守るなんて言われたら、見下されてるな~って思っちゃいます」と言われ、仰天してしまう。
それって、女の子ならみんなそう思うのか? 向井くんが率直に尋ねると、洸稀はこう返す。「あのね、女の子なんて人格は、ないの。人それぞれ、相手に合わせて考えて」。
女だからこう、男だからこう、子どもだからこう、妻だから、夫だから……。人は、自分を“大きな主語”に括られると、とたんに抵抗したくなる生き物だ。それなのに、自分が相手をわかりやすい箱に区分けすることには、なんの疑問ももたない。
女の子なんて人格も、男の子なんて人格も、ない。一般論や世間のものさしに頼らず、自分と相手、それぞれを個の存在として認め、心を想像すること。恋愛というより、人間関係の基礎に立ち返らせてくれる名言だ。
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