◆『ハウル』での「騙されそう」になる魅力とのギャップ
この独善的な父親像は、『ハウルの動く城』で木村拓哉が演じたハウルと正反対のようで、実は似ているところもあると思う。
ハウルはいかにもな美青年だが、「掃除も大概にするように、掃除婦さんに言っといて」と少し嫌味を感じさせるセリフも口にしていて、髪色が変わるとヒロインのソフィーへ声を荒げたうえで、「もう終わりだ……美しくなかったら生きていたって仕方がない……」とまで言ったこともある。
こちらも木村拓哉の声そのものがカッコよく、つい「騙されそう」になる魅力があるからこそ、些細なことで絶望する演技とのギャップが際立っている。
この時のハウルの言葉は、ソフィーを「私なんか美しかったことなんて一度もないわ!」と怒らせるし、それにはやはり共感できる。『君たちはどう生きるか』の勝一と同様に「自分のことしか考えていない」キャラクターを、木村拓哉は見事に表現できるのだ。
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