◆ミュージカルでは全公演を録音

山崎育三郎
 自分の歌声を客観的に聴くために全公演を録音しているという山崎さん。デビュー当時から変わらず続けている習慣です。

「昔から舞台やミュージカル公演のときは、終わってから自分の歌声を客観的に聴きたくて全公演録音してるんですよ。昔は楽屋のスピーカーのところにレコーダーを置いてから舞台に立ってました。

 今になってデビュー当時の『レ・ミゼラブル』のマリウスの声とかを聴くと、『こんな声だったんだ』と思ったり。ちょっと恥ずかしいようなパフォーマンスをしてたりもするけど、録っておいてよかったと思います。

 映像は表情だったり。画の力が大事だから、7~8割が画面からの情報。だけど舞台はアップになったりしないので、7~8割が音からの情報。お客さまは耳から入るニュアンスとか表現で情報を得ているので、大事なのは音なんですよ。だから、今でも終わってから録音したやつをチェックしてます」

 ひとつひとつの作品と真摯に向き合う山崎さんですが、SNSでの評判は調べないようにしているといいます。

「嫌なことが書いてあったら嫌だから、SNSで自分のことや評判は調べないタイプかな。良いことだけ書いてあるなら見るけど。でも、そもそもそういう声はあんまり気にならないタイプかも。嫌な言葉が目に入っても『ふーん』で終わる。自分がどういう気持ちで挑んでいるかを大切にしたいし、いろんな情報が入ってくると混乱することもあるから。

 大人になってからミュージカルデビューした作品がクワトロキャストだったので、同じ役を演じる人が僕を含めて4人いたんですよ。その4人の中で僕は一番下っ端だったし、皆さんうまくて。それでもやっぱり比べられる。

 そしたら演出家の方から、『ほかの3人が稽古しているときは来なくていい。とにかく自分とだけ向き合いなさい』と言われて。ほかの人の芝居を見てしまうと、『もっとこういう風にお芝居したらいいのかな?』とか迷うし、自分がやりたいことができなくなるからって。とにかく自分と向き合わないと苦しむのかなと思います」