その一方で「ジャニー氏が起こした問題であって、所属タレントに罪はない」との立場から契約継続を明言している企業も少なからずあるが、大企業の多くは厳しい見方。その要因としてはやはり、ジュリー氏が代表取締役として残留するという「外部専門家による再発防止特別チーム」が指摘した同族経営の問題の解消がなされていない点や、所属タレントが社長に就任する点など、「新体制」と呼ぶには代わり映えしない印象が強い部分が指摘されている。特に象徴的とされるのが、東山新社長がジャニー氏の名前を冠した「ジャニーズ事務所」という屋号を継続する意向を示したことだろう。いくらタレントに罪はないといっても、スポンサー企業にすればジャニー氏の名前を想起させる事務所と契約しているというだけでイメージに悪影響があるかもしれず、国際的に展開している大企業は海外の反応も気になるだろう。

 ただ、会見の終盤にはジャニーズアイランド社長の井ノ原快彦が「(ジャニーズの名称が)犯罪者の名前、ということについては、これからも考えていかなければならない」「みんなで時間をかけ、変えるなら変える、変えないなら変えない。しっかりみんなの了解を得ていく」と名称変更の可能性を示唆。これを受けて、東山新社長は社名変更を検討する余地が「ある」と発言しており、スポンサーからの反発なども含めれば、「ジャニーズ事務所」の社名が消滅する未来もあり得るのかもしれない。被害者への補償が速やかに進めばジュリー氏は代表取締役を退くとの意向も示しており、現在は本格的な「新体制」への移行期間といえそうだ。

 とはいえ、そうしている間に大企業を中心に「ジャニーズ離れ」の動きがさらに加速するおそれもあり、現行CMが次々と契約解除となる可能性だけでなく、今後についても「しばらく、ジャニーズタレントのCM新規契約はほとんどなくなるだろう」との見方が広告業界で大勢を占めている。日本航空がジャニーズ起用見送りを「適切な対応がとられるのを確認するまで」としたことにも現れているように、一刻も早く事務所への信頼を取り戻す体制改革が求められる。

 被害者への補償金額については、100億円に達する可能性もあるとの見方も出ており、ジャニーズ事務所にとって大きな収入源のひとつであるCM契約が激減したら、会社の屋台骨が揺らぎかねない。ひとまずは記者会見を何とか終えたジャニーズ事務所だが、本当の正念場はまだこれからといえそうだ。