◆子どもを狙った性犯罪はあらゆる場面で起きている

 一方、同制度を取り巻き、さまざまな議論が起こっています。その争点のひとつとなるのが、対象となる職種についてです。

 現状では、保育所や幼稚園・学校・児童養護施設など行政の許認可が必要な施設は義務化の方針が定まっているなかで、学習塾やスポーツクラブなどの民間事業者については“任意”もしくは“義務”とするか、いまだ意見が取り交わされています。

 この点について、200名を超える小児性犯罪の加害者臨床に携わってきた斉藤氏は、実例を挙げながら「可能な限り多様なケースを想定した細やかな制度設計をすべき」と指摘します。

「最近でも、大手中学受験塾の『四谷大塚』の講師が教え子を盗撮したなどとして逮捕される事件がありましたが、民間事業者が運営する施設内で子どもが性犯罪に巻き込まれるケースは非常に多いです。加害者臨床に携わってきた立場からすれば、制限の対象を一部に限定せず、幅広い職種で有効にすることが、再犯防止のために望ましいと言えます。

 また、子どもを狙った性犯罪が発生するシチュエーションは、一般的に想定されている範囲に限らず、非常に多様です。例えば以前あるスポーツクラブで、ボランティアのスタッフの一人が練習後に児童たちをプールに引率して、そこで加害行為に及んだという事例がありました。

 このように大人が子どもと関わる環境、および性被害が発生する環境というのは、そこに報酬が発生するか否かを問わず存在します。そのため、雇用主・被雇用者といった構造に限定しない取り組みも考慮すべきだと思います」(以下、斉藤氏)