◆みんな危ういところを踏みとどまって生きている

(C)2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ
――筒井さんが演じた、依子は新興宗教「緑命会」の活動に勤しむキャラクター。依子を見て、なにかにすがりたいと考える気持ちは誰にでもあるものだなと感じました。

筒井真理子(以下、筒井):そうですよね。特にここ数年は、コロナ禍ですごく閉塞していましたし、自分たちが今まで当たり前に思っていたお仕事が当たり前にできなくなったりもしたじゃないですか。だから、何を頼りに生きていったらいいのかわからなくなってしまうことって身近だと思うんですよね。

――実際に筒井さんの周りでも、そういう悩みを抱えた方はいらっしゃいました?

筒井:いますね。1番仲良かった友人となかなか連絡が取れなくなってしまって、あとあと聞いたら、依子のように宗教にハマってしまったようで。でも、今、この不安定な時代に「なにかにすがりたい」って思うのは、当然だなとも思うんです。私だって他人事ではないと思ってしまいます。

――なるほど。

筒井:忙しくしているときは忘れてしまうんですけど、みんな危ういところを踏みとどまって生きているんだなって、ふと思うことがあるんです。それは、子供の頃に父の会社で働いている方が「夜ね、ふとちょっとおかしくなるんじゃないかと思ったの」って言っていたのを覚えているからなんですけど、普段はすごい気丈な方なんですよ。でも、きっとそれは「おかしい」のではなくて、誰しも持っているところなんじゃないかなって。

――筒井さんご自身は、心の支えとしているものはありますか?

筒井:私、池田晶子さんの『人生のほんとう』っていう本が大好きで、ときどきその本を読んで立ち返るんですよね。「だって生まれちゃってるんですから」みたいなところから始まるのですが「しょうがない」みたいなたくましさを感じて。「考えたってしょうがないしな、だってわかんないんだもん」ってリセットできるんです。だから、今回の映画の「絶望を笑う」みたいなのも、すごくわかるんです。